暮らしにフィットする木製建具をオーダーするという選択肢

部屋の雰囲気や暮らしの快適さを左右する「建具(たてぐ)」。ドアや引き戸、間仕切りなど、家の中に溶け込んでいるからこそ、その存在に気づきにくいかもしれません。しかし、「開け閉めがしづらい」「見た目が部屋と合わない」といった違和感は、日々のストレスに直結します。そうした悩みを根本から解決できるのが、“木製建具のオーダー”です。


既製品ではカバーできない細かい寸法、こだわりの素材や意匠、間取りや使い方にぴったり合わせた設計——オーダーならではの自由度が、多様化する住まい方と相性がよく、今あらためて注目されています。特に木製建具は、空間に温かみや統一感を与えるだけでなく、長く使うほどに味わいが増していく点も魅力の一つです。


ただし、自由に選べるからこそ「何を基準に考えればいいか分からない」と迷う声も少なくありません。本記事では、オーダー建具の種類や特徴、意匠設計の考え方、素材選びや業者選定まで、建具をつくるうえで大切なポイントを丁寧に整理します。後悔のない選択をするためのヒントとして、ぜひご活用ください。




オーダー建具の種類と特徴:引き戸・開き戸・格子戸などの違い

建具と一口にいっても、その種類は多岐にわたります。大きく分けると、開き戸(ドア)、引き戸、折れ戸、格子戸などがあり、使う場所や暮らし方によって適した形式が異なります。オーダーの魅力は、これらを「見た目」や「サイズ」だけでなく、「使い方」や「設置環境」に合わせて自由に選べる点にあります。


たとえば「開き戸」は、密閉性が高く音漏れや冷暖房効率を重視したい場所に向いています。一方「引き戸」は、開閉にスペースを取らず、動線がスムーズになるため、リビングや和室との相性が抜群です。特に高齢者のいる家庭では、開け閉めがしやすい引き戸が好まれる傾向にあります。


また「格子戸」や「板戸」といった和風建具は、和モダンな住宅や店舗でも人気があり、視線を適度に遮りながらも風通しを確保するデザインとして重宝されています。建具の存在感が空間の印象を左右するため、玄関や廊下など目に入りやすい場所には、意匠性の高いものを選ぶことで印象が大きく変わります。


オーダー建具の魅力は、ただ形を整えるだけでなく、「暮らし方に合わせた機能性」を組み込める点にあります。次のセクションでは、その意匠性と機能性をどうバランスさせるか、設計上の考え方を掘り下げていきます。




意匠性と機能性をどう両立させる?設計で押さえたい3つの視点

建具をオーダーする際に迷いやすいのが、「見た目の美しさ」と「使いやすさ」をどう両立させるか、という点です。せっかく素材や形にこだわっても、開け閉めしづらかったり、湿気で反ったりしてしまっては本末転倒です。意匠と実用性のバランスを取るには、設計の段階で次の3つの視点を意識することが重要です。


まずひとつ目は「使用頻度と導線の整理」です。たとえば頻繁に行き来する場所であれば、軽く動かせる構造や、引き戸にして開閉ストレスを減らす設計が有効です。逆にあまり使わない収納扉であれば、デザイン性を重視して空間のアクセントにするという考え方もあります。


二つ目は「環境条件を反映させること」。日当たりや湿気、冬場の結露、冷暖房の効率など、建具は周囲の環境と密接に関わります。木製建具は見た目こそ美しいものの、調湿性能や反りへの配慮が必要です。適切な木材選定や構造処理を行うことで、使い勝手と耐久性を両立できます。


三つ目は「周囲との調和」です。床材や壁、既存の建具との色味・素材感がちぐはぐだと、建具だけが浮いた印象になります。特にリフォームや部分更新の際は、既存の空間にいかになじませるかが鍵です。サンプルだけで判断せず、図面や既存写真と照らし合わせながら設計すると、失敗が少なくなります。


次のセクションでは、こうした設計を支える「素材=木材」の種類と選び方について、もう少し踏み込んで見ていきます。




素材選びで後悔しないために。代表的な木材とその違い

木製建具をオーダーするうえで、素材選びは避けて通れない大切なステップです。見た目や触り心地だけでなく、強度や反りにくさ、加工のしやすさといった性質が木の種類ごとに異なるため、目的や使う場所に合った材を選ぶことが求められます。ここでは、建具に使われる代表的な木材とその特徴を整理します。


まず広く用いられているのが「タモ(アッシュ)」です。強度と弾力性があり、はっきりとした木目が美しく、和・洋どちらのインテリアにも調和します。反りにくく加工性も高いため、引き戸や間仕切りなど可動部に適しています。一方、表面が硬いため、キズが目立つこともあります。


「ヒノキ」は、軽さと香りの良さから人気があり、特に和風建築や格子戸に使われることが多い素材です。柔らかく加工しやすい一方で、衝撃にはやや弱いため、丁寧な扱いが求められます。時間とともに飴色に変化する経年美化も特徴です。


「ナラ(オーク)」は重厚で高級感のある素材で、重さがあるぶん強度も高く、しっかりとした框(かまち)構造の建具によく使われます。導管が太く、ザラつきのある表面がナチュラルな印象を与え、節あり・節なしを選ぶことで雰囲気も大きく変わります。


このほか、「スプルース」や「レッドシダー」などの針葉樹系素材もありますが、地域の気候や使用場所との相性も大切な要素です。また、無垢材か合板(突き板)かによって、コストや反りへの強さも変わります。見た目重視だけで選んでしまうと、設置後に動きが悪くなったり、思ったより重くなったりと、思わぬトラブルにつながることもあるため注意が必要です。


次のセクションでは、実際にオーダーする際に気になる「価格感」や「納期」について具体的に解説します。




見積もり前に知っておきたい「費用感」と「納期の目安」

「オーダーっていくらくらいかかるの?」「工事までにどれくらい時間が必要?」——建具をオーダーしようと考えたとき、多くの人が最初に抱くのがこの疑問です。実際の費用や納期は、使用する木材の種類、建具のサイズ、仕上げ方法、金物の有無などによって大きく変わりますが、あらかじめ相場を知っておくことで見積もりの内容にも納得しやすくなります。


一般的に、オーダー建具1枚あたりの価格帯は5万円〜15万円程度が目安とされます。たとえば、シンプルなフラッシュ戸(芯材に合板を貼った軽量構造)であれば比較的安価に抑えられますが、無垢材を使った框組(かまちぐみ)や格子戸、特殊なデザインを含むものは10万円を超えることも珍しくありません。また、扉だけでなく「枠(わく)ごと交換」になると、その分コストはさらに上がります。


加えて、塗装や仕上げ加工の内容によっても価格に差が出ます。ウレタン塗装や自然系オイル仕上げ、色付き塗装など、仕上げの選択肢が増えるほど、工程と費用も増えていきます。予算に合わせて、どの部分を既製品にし、どの部分をオーダーにするかを調整するのもひとつの方法です。


納期については、設計打ち合わせが完了してから製作・納品までに2〜4週間程度が一般的です。職人の作業スケジュールや繁忙期などによっては、それ以上かかることもあります。とくに引っ越しやリフォームと並行して進める場合は、余裕を持ったスケジュールを組んでおくことが大切です。


こうした見積もりや納期の話は、最初の打ち合わせ段階でできるだけ詳しく聞いておくのが理想です。依頼先によっては、過去の事例や費用目安を丁寧に提示してくれるところもあります。「聞きにくい」と感じることこそ、最初に確認しておくことで後のトラブルを防げます。


▶ 建具づくりのご相談はこちら:https://www.taiken-o.jp/job


次のセクションでは、安心して任せられる依頼先を見つけるためのポイントをご紹介します。




建具をオーダーするなら誰に頼む?業者選びのチェックポイント

オーダー建具の満足度は、「誰に頼むか」で大きく左右されます。図面通りに作るだけではなく、使い勝手やメンテナンスまで考えた提案ができる業者こそが、本当に信頼できるパートナーです。そのためには、製作実績だけでなく「相談時の対応」にもしっかり目を向けることが重要です。


丁寧に話を聞いてくれるか、要望をきちんと図面や仕様に落とし込んでくれるか。見積もりが明瞭か、納期の見通しが正確か。こうした点を確認することで、後からのズレやトラブルを防げます。また、自社工房を持ち、製作から取付けまで一貫対応できる体制がある業者であれば、工程ごとの調整もしやすく、柔軟な対応が期待できます。


建具は暮らしの中で毎日触れるものです。「気持ちよく開き、静かに閉まる」——そんな当たり前を支える技術と姿勢を持った職人との出会いが、何より大切です。


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